動画生成AIの普及で、製品紹介や営業用の動画は以前よりずっと作りやすくなりました。しかし、動画の数や再生数が増えても、商談が増えるとは限りません。この記事では、視聴データが商談につながらない本当の原因と、その解決策を解説します。
なお、本記事で扱う動画とは、SNS広告などの認知向けの動画ではなく、Webサイトやメールで配信する製品紹介・デモ・導入事例・ウェビナーのアーカイブなど、検討を後押しするための動画とします。
【目次】
- 動画の本数や再生数が増えても、商談が増えない理由
- 動画の視聴データは、法人向け配信ツールで十分に取れる
- 視聴データがあっても商談につながらない本当の原因
- 営業で動画の視聴データを商談に活かせない理由
- 動画の視聴データの分析と活用を、AIで効率化する
- まとめ:動画の本数より、視聴データの活かし方が商談を増やす
動画の本数や再生数が増えても、商談が増えない理由
動画生成AIで、動画は短期間で作れるようになった
以前は、製品紹介動画を1本作るにも、企画・撮影・編集で数週間かかることが珍しくありませんでした。しかし、今は動画生成AIを使えば、既存の社内資料やテキストの指示で、短時間で動画を作れます。
参考記事:法人向け動画生成AIの活用方法と運用のポイント
製品ごと、業界ごと、検討段階ごとに動画を用意することも、難しくなくなりました。
商談が増えない主な原因は3つ
ところが、動画の本数や再生数が増えても、商談の数はあまり変わらないという声をよく聞きます。主な原因は次の3つです。
- 視聴データを確認するだけで、次の行動が決まっていない
- 視聴データから施策を考えられる人がいない
- 営業が視聴データを商談に活かせていない
どれも、動画の出来やツールの機能の問題ではありません。以下で、順に説明します。
動画の視聴データは、法人向け配信ツールで十分に取れる
法人向け配信プラットフォームで取れるデータ
法人向けの動画配信プラットフォームでは、視聴者ごとに次のようなデータを取れます。
- どの動画を、いつ、何回見たか
- 動画の何%まで見たか
- どこで離脱したか、どこを繰り返し見たか
フォーム登録後やMAから送ったメール経由で動画を見てもらえば、「誰が」見たかも分かります。「動画を見た人の関心度が分からない」という悩みは、ツールの面ではほぼ解消されています。
MA・SFAとの連携も、多くは標準機能で足りる
「データを営業に渡すには、システム開発が必要ではないか」と考える方もいるかもしれません。しかし、主要な配信プラットフォームの多くは、MarketoやHubSpot、Salesforceなどとの連携機能を標準で用意しています。個別開発が必要になるケースは一部で、多くは連携ツールやプラットフォームの機能で対応できます。つまり、「データが取れない」「連携できない」ことは、商談につながらない主な原因ではありません。
登録情報の1〜2割は連絡がつかないこともある
一つ注意したいのは、登録情報の質です。現場の感覚では、動画やウェビナーの視聴登録のうち1〜2割は、虚偽の情報で登録されることが多いのが実情です。営業が連絡しようとしても、電話番号もメールアドレスもダミーでつながらないのです。視聴リストの人数をそのまま「営業が追えるリード数」と考えると、見込みがずれてしまいます。
視聴データがあっても商談につながらない本当の原因
データは取れていて、連携もできている。それでも商談が増えないのは、データを受け取った後の「人」の部分に原因があることがほとんどです。
数字の確認と報告だけで、次の施策が決まらない
動画施策の担当者の多くは、ほかにも多くの業務を抱えています。時間がない中では、再生数や視聴率を月ごとに確認して報告するだけで精一杯になりがちです。「この動画は視聴率が高い」「この動画は途中で離脱が多い」までは分かっても、「だから次に何をするか」まで考える余裕がありません。数字を見ること自体が目的になり、戦略につながらないまま時間が過ぎていきます。
視聴データを事業の施策に結びつけられる人がいない
もう一つよく見られるのが、動画施策の担当者が「施策を回す人」にとどまっているケースです。担当者が自社の事業や市場の動き、ユーザー行動や営業の流れを深く理解していないと、数字の変化を事業の打ち手に結びつけられません。その結果、動画の制作や配信は続いていても、動画が商談づくりの中でどんな役割を担うのかが曖昧なまま運用されてしまいます。数字を追うだけでは事業は動きません。視聴データを活かすには、事業を理解し、営業と一緒に打ち手を決められるマーケターや営業の存在が欠かせません。
動画の本数が増えるほど、視聴データの確認が追いつかなくなる
動画生成AIで動画の本数が増えると、この問題はさらに大きくなります。動画が10本から50本になれば、確認すべき視聴データも5倍になります。制作が楽になった分、読み解きの負担が一気に増えるのです。「動画は増えたのに、データを見る時間は増えていない」という状態では、せっかくの視聴データも活かされません。
営業で動画の視聴データを商談に活かせない理由
動画を最後まで見た人でも、すぐに導入したいとは限らない
動画を最後まで見た人は、内容に興味があることは確かです。しかし、それは「今すぐ導入を検討している」という意味ではありません。情報収集の一環として見ている人も多く、導入への熱量はまだ高くないのが一般的です。視聴データは「購入意欲」ではなく、「関心のあるテーマ」を示すものとして扱う方が、実態に合っています。
視聴データをそのまま話題にすると、顧客に警戒される
営業が視聴データをそのまま話題にすると、相手は「見ていたことを知られている」と感じ、警戒してしまいます。営業側もそれを分かっているため、「どう切り出せばいいか分からない」となり、せっかくの情報を使えないまま終わりがちです。
情報提供型のアプローチ例
NG例
「先日の製品紹介動画を最後までご覧いただいたようですが、ご検討状況はいかがですか?」
OK例
「最近、○○の運用方法についてご相談いただくことが多く、事例をまとめた資料をお送りしています。貴社では○○の運用でお困りのことはありませんか?」
OK例のポイントは、視聴データを「話題選び」に使い、実際のデータは相手には伝えないことです。データで誰が、どの動画の、どの部分を見たかが分かれば、相手の関心に合った話題を自然に選べます。
動画の視聴データの分析と活用を、AIで効率化する
ここまで見てきた課題は、どれも「データを読み解いて、次の打ち手に変える」部分にあります。この部分は、すべてを人が担う必要はありません。
視聴データの分析でAIに任せられること
- 視聴データの要約と傾向の整理:「今月は料金説明の動画で離脱が増えている」「A業界の視聴者は事例動画をよく見ている」など、数字の変化を文章でまとめる
- 打ち手の候補出し:傾向をもとに、「料金動画の構成を見直す」「A業界向けの事例を追加する」などの候補を挙げる
- 営業が話題にできる材料づくり:視聴者ごとに、関心がありそうなテーマと、送ると役立ちそうな資料をまとめる
- 登録情報の不備チェック:明らかに不自然な名前やメールアドレスを事前に見つけ、営業の空振りを減らす
担当者は、AIがまとめた内容を確認して判断するところから始められます。数字を一から読み解く時間が減るので、戦略を考える時間を作れます。
AIに任せず、人が判断すべきこと
AIに任せておけばコンテンツ生成もデータ収集・分析も商談のための打ち手の壁打ちも全自動で行えるとする話もよく聞くようになりました。ただし現時点では、どの打ち手を選ぶのか、それをどの程度時間をかけてどのくらいの期間行うのか、どの顧客から対応するかは、事業や顧客の状況を理解している人が方針を決める必要があります。AIが担うのは、判断に必要な材料をそろえ、整理するところまでです。事業の方向性や市場を理解して打ち手の詳細を練って推進する担当者は、AIネイティブな会社でも必要です。
動画視聴データの整理をAIで行う
最初からすべての動画と営業チームで取り組む必要はありません。たとえば、次のように範囲を絞って始めるのがおすすめです。
- 対象:製品紹介や料金説明など、商談に近い動画数本
- 利用者:1つの営業チーム
- 期間:1〜3か月
AIがまとめた視聴データを営業が実際に使い、「話題選びに役立ったか」「連絡がつく相手が増えたか」を確かめます。効果が見えてから、対象の動画やチームを広げていけば十分です。
まとめ:動画の本数より、視聴データの活かし方が商談を増やす
動画生成AIで、動画は作りやすくなりました。しかし、商談を増やすために必要なのは、動画の本数を増やすことではなく、今ある視聴データを次の施策に活かすことです。視聴データは法人向けの配信ツールで十分に取れ、MA・SFAとの連携も多くは標準機能で足ります。多くの企業で足りていないのは、データを見て「次に何をするか」を決める部分です。データの整理はAIに任せ、人は判断に集中する、この役割分担が、動画を商談につなげる近道です。
当社では、AIで視聴データの傾向をまとめたり、視聴者ごとに関心がありそうなテーマを営業に知らせたりする仕組みを、企業ごとの運用に合わせてご提案しています。視聴データは見ているのに、次に何をすればいいか決まらない。そんなときは、お気軽にご相談ください。
