コラム
2026年6月2日
「シャドーIT」という言葉をよく耳にするようになり、自社は大丈夫なのか不安に感じる方も多いのではないでしょうか。とはいえ、高額な管理ツールを導入する予算や、専任の情シス担当者がいない会社もあるでしょう。シャドーITは、必ずしも悪意から生まれるものではありません。現場が「もっと効率よく仕事を進めたい」と考えた結果、会社の管理外でツールを使ってしまうケースもあるのです。
この記事では、予算をかけずに明日からできる発見方法と、現場に無理なく浸透させる対策を解説します。
【目次】
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シャドーITとは、会社が把握していないITツールを、社員が業務で使う状態を指します。たとえば、個人スマホや私物PC、未承認のクラウドサービス、無料のファイル転送サービスなどが該当します。会社側が利用状況を把握できないツールは、アクセス権の管理やデータ削除が適切に行えず、情報漏洩につながる恐れがあります。
シャドーITとBYOD、サンクションITの違いは、会社が把握・管理できているかで判断します。サンクションITとは、会社が正式に許可し、管理下においているITツールを指します。その中で、ルールを定めて私物端末の利用を許可していればBYODに該当します。反対に、社員が無許可で業務に使っている個人アプリや私物端末はシャドーITと呼ばれます。

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シャドーITが増えた背景には、働き方の変化があります。テレワークが広がり、社外から業務を進める機会が増えました。同時に、個人でもすぐ登録できるSaaSやクラウドサービスも増え、チャット、ファイル共有、メモ、生成AIなど、便利なツールが数多く登場しています。無料プランから使えるサービスも多く、導入のハードルは高くありません。そのため、社員が「少し使うだけなら大丈夫」と判断しやすくなっているのです。
シャドーITは、現場の業務効率化への善意から生まれる場合もあります。社内には、顧客へ早く返信したい、面倒な手作業を減らしミスを防ぎたい、と考える社員もいるでしょう。しかし、会社の公式ツールが使いにくいと、現場は別の手段を探します。古いシステムや複雑な申請ルールが、無許可ツール利用のきっかけになりかねません。現場の不便さを放置しておくと、隠れてシャドーITが利用される可能性があるのです。
シャドーITを放置すると、会社はデータの所在を把握できません。特に危険なのは、退職者や異動者のアカウントにデータが残るケースです。個人のオンラインストレージに、顧客リストが残ってしまうなどが該当します。会社がアクセス権を消せないため、情報を回収できないままになるのです。端末紛失や誤共有で漏洩するおそれがある上、会社が知らない場所に情報があること自体が大きなリスクになり得ます。
無料サービスやフリーソフトには、安全性や脆弱性が不明なものもあります。便利だからと安易に使うと、アカウント乗っ取りの入口になります。たとえば、個人で使い回しているパスワードが流出するケースです。情報を他者に使われてしまうと、業務データへ不正ログインされる危険があります。また、脆弱性のあるソフトを入れた端末が感染源になる場合もあります。そこから社内ネットワーク全体へ、マルウェア被害が広がる可能性も否定できません。
シャドーITによって顧客情報や取引先情報が社外に漏れれば、法的責任を問われる場合もあります。損害賠償や問い合わせ対応に追われ、通常業務が停止するリスクもあります。さらに、報道やSNSで広がれば、企業の信用は大きく傷つくでしょう。一度失った信頼を取り戻すには、長い時間と大きな費用がかかります。だからこそ、シャドーITは小さな不便の段階で対策を講じることが重要といえます。
個人のチャットツールで業務連絡をするのは、身近なシャドーITの例です。急ぎの確認などで使いやすい一方、誤送信による情報漏洩の危険があります。また、退職後も履歴が個人端末に残り、会社側で削除できません。業務と私用の境界が曖昧になる点も注意が必要です。
大容量ファイルを送るため、無料の転送サービスを個人判断で使ってしまうケースもあるでしょう。便利な一方で、保存期間や閲覧権限が不明確な場合があります。また、個人のクラウドストレージに業務資料を保存すると、会社側で管理や削除ができず危険です。
近年は、生成AIの無許可利用も代表的なシャドーITです。便利な一方で、個人アカウントに業務データを入力すると、情報漏洩につながる危険があります。入力内容が学習に使われる可能性もあるため、顧客名や契約内容、社内資料などを入力するのは避けるべきです。利用時は会社が許可した環境に限定しましょう。
現場で作られたExcelマクロや自動化ツールにも注意が必要です。作成者しか仕組みを理解していない場合、その人が退職や異動をすると、誰も修正できなくなるかもしれません。マクロが急に止まってしまい、原因を直せず、業務が完全にストップするという例もあります。自動化は業務効率化に有効な手段ですが、ブラックボックス化や属人化を防ぐ運用が重要です。
経費精算や領収書の確認も、シャドーIT対策として有効です。個人の立替精算に、SaaS利用料が含まれていないか見てみましょう。たとえば、月額数百円から数千円のクラウドサービス費用です。少額だと見逃しやすいですが、業務利用のサインになる場合があります。海外サービスの月額課金や、ファイル共有・翻訳ツールの支払いがないかを確認しましょう。総務・経理の視点で見ると、現場の利用実態が把握しやすくなります。地道ですが、効果的な確認方法です。
社内アンケートやヒアリングも有効な方法ですが、「無許可ツールを使っていませんか」と取り締まるような形で聞くと、現場の反感を買う可能性があります。
次のように、業務の負担軽減を目的に聞くことで、社員の本音を引き出せることがあります。
現場の困りごとや工夫を聞く姿勢を見せると、裏で使われているツールの実態も把握しやすくなります。
今利用している公式ツールの管理画面も確認しておくとよいでしょう。たとえば、管理外の外部アプリと連携されていないかを確認します。見覚えのないアプリが接続されていれば、無許可利用の可能性があります。また、不審なログイン履歴や、海外からのアクセスも確認対象です。退職者や異動者のアカウントが残っていないかも見直しましょう。

まずは、社内で使われているツールを整理します。そのうえで、「使ってよいツール」と申請ルールを明確にしましょう。基準や窓口を決めておくと、無断利用を防ぎやすくなります。
ルールを作るだけでは不十分です。過去のトラブル事例を共有し、「なぜ危険なのか」を社員へ伝えましょう。具体的な情報漏洩やアカウント乗っ取りのケースを引き合いに出すと、より危機感を持って理解されやすくなります。大切なのは、責めるのではなく、安全な使い方へ誘導する姿勢です。
シャドーIT対策は、取り締まりだけでは限界があります。便利な手段がなければ、現場は別のツールを使ってしまう可能性が高いです。そのため、現場が本当に使いやすい公式ツールを会社として用意しましょう。導入は管理部門のみで決定するのではなく、トライアルで実際の使用者に使ってもらい、使い勝手や機能の過不足などを評価するとより効果的です。
シャドーITは、「もっと効率よく仕事がしたい」という現場の熱意から生まれることがあります。頭ごなしに禁止するだけでは、隠れた利用が続くおそれを招くでしょう。一方で、会社が把握していないツール利用には大きな危険があります。一度でも情報漏洩やコンプライアンス違反が起きれば、損害賠償や信用低下につながるのです。まずは、経費精算チェックや前向きなヒアリングで実態を可視化しましょう。そのうえで、現場が本当に必要としている公式ツールを用意することが大切です。使いやすく安全な環境を会社が整えることが、シャドーITを防ぐ方法なのです。
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