コラム
企業の人事部が担う業務は多岐にわたるため、日々の対応に追われて本来やるべきコア業務に集中できないと感じている方も多いのではないでしょうか。特に中小企業では「人手が足りない」「アナログな作業が多い」といった課題が重なり、業務効率化が進みにくい現状が見受けられます。
本記事ではこうした課題を解決する手段として「人事業務の自動化」に焦点を当て、明日から実践できる具体的な進め方についてわかりやすく解説します。
【目次】
人事業務が非効率に陥りやすい背景には、以下のような要因があると考えられます。
人事領域は依然として紙ベースでのアナログな運用を続けているケースが多く、物理的な書類の保管や管理に手間がかかります。加えて、入社・退職手続きや身上変更届、年末調整といった各種手続きにおいては、書類の配布・回収や押印のやり取りが発生し、業務全体のスピードを低下させる要因となっています。
人事業務に関わる労働関連法や社会保険制度は頻繁に改正が行われており、その都度正確な対応が求められます。こうしたプロセスの複雑化により、特定の担当者しか業務を把握できていない「属人化」が起こりやすく、担当者の不在時に業務が滞るリスクが高まってしまいます。
業務効率化のためにITツールの導入が有効とわかっていても、それを推進する人材やノウハウが不足している企業も少なくありません。いわゆる「一人情シス」や他業務との兼任では、情報収集やツール選定に十分な時間を避けず、導入に踏み切れないまま非効率な運用を続けてしまうケースも多く見られます。
人事業務の非効率を解消する方法は一つではなく、代表的なものとして以下の3つのアプローチがあります。
「そもそもこの業務は必要なのか?」という視点から、現行のプロセスをゼロベースで見直し、非効率な作業や重複している工程を洗い出します。例えば、過剰な承認フローを簡略化する、不要な報告書を廃止するといったアプローチにより、業務全体の効率化・最適化につなげることができます。
給与計算や社会保険手続きなど、専門性の高い定型業務を外部に委託する方法です。外部リソースの活用は業務の専門性を確保できる一方で、継続的なコスト発生や社外との情報連携の手間が増えるといった側面もあるため、メリット・デメリットを踏まえたうえで検討することが重要です。
RPAやSaaSツールを用いて、これまで手作業で行っていた業務をシステムに置き換える方法です。繰り返し発生する定型業務において高い効果が期待でき、作業時間の削減やミスの防止につなげられます。
本記事では、この「自動化」に焦点を当て、人事業務との相性や具体的な導入手順について解説していきます。
自動化とは、RPAやSaaSなどのテクノロジーを活用して業務を効率化・省力化する取り組みです。人事領域でも活用が広がっており、担当者の負担を軽減しながら安定かつ正確な運用が可能となります。
ここでは、自動化の基本的な知識をわかりやすく解説します。
人事業務は幅広い領域にまたがりますが、多くの業務が自動化の対象となります。以下のように、日常的に発生するルーティン作業やルール化しやすい業務は、自動化との相性が良い領域です。
採用業務
労務管理
人材育成・評価
人事業務の自動化を進めるうえでは、「RPA」と「SaaS」という2つの代表的な手法があります。それぞれの特徴と向いている業務は以下の通りです。
| RPA | SaaS | |
| 特徴 | PC上の定型作業をロボットが代行するツール。既存システムをそのまま活用できる。 | 特定の人事業務(勤怠・給与・採用など)に特化したクラウドサービス。 |
| 向いている業務 | ・システム間のデータ転記 ・データの収集・集計作業 ・定型レポート作成 | 勤怠管理、給与計算、採用管理など業務全体の効率化 |
RPAとSaaSのどちらを選ぶべきかは、自社の課題や業務状況、リソースによって異なります。既存のフローを大きく変えずに効率化したい場合は「RPA」、業務プロセスそのものを最適化したい場合は「SaaS」が向いていますが、業務の特性に応じてツールを使い分けたり組み合わせたりする方法もあります。
また、ツール導入を検討する際には自動化によって得られるメリットだけでなく、見落としがちなデメリットにも目を向けることが重要です。
メリット
デメリット
これらのポイントも踏まえながら、自社の目的や体制に合った方法を選定しましょう。
人事業務の自動化を成功させるには、現場や経営層の理解を得ながら段階的に進めることが重要です。ここでは、明日から実践できる業務自動化の具体的な手順をご紹介します。
まずは現状の業務を正しく把握するために、「誰が・何を・どのくらいの頻度(時間)で行っているか」をすべて書き出しましょう。これにより、業務の無駄やボトルネックが可視化され、解決すべき課題が明確になります。
そのうえで、「〇〇業務の時間を月20時間削減する」といった具体的な目標を設定します。測定可能な目標を立てることで、取り組みの成果を定量的に評価でき、継続的な改善につなげやすくなります。
次に、洗い出した業務の中から自動化に取り組む対象を選定します。すべてを一度に進めるのではなく、効果が大きく、かつ実現しやすい業務から優先的に着手するのがポイントです。
優先的に自動化すべき業務
併せて、自社に適した自動化ツールを選定します。自社の業務内容や運用体制に合っていないツールを導入すると、かえって現場の負担が増える可能性もあるため、以下のポイントを押さえながら慎重に見極めることが大切です。
ツール選定のポイント
自動化を進める際は、導入コストや削減できる人件費などをもとにROI(費用対効果)を試算することが重要です。投じた費用に対する効果を数値で示すことで、上司や経営層の理解を得やすくなります。
コスト面以外にも、自動化によって得られる付加価値を明確に伝えることで、社内の合意形成をスムーズに進められます。例えば、業務品質の向上や属人化の解消など、自社の課題と紐付けながら具体的に示すのが効果的です。
自動化を無理なく定着させるコツは、小さく段階的に導入を進めることです。一気に全社展開するのではなく、まずは特定の部署や業務に絞って始めるのが望ましいでしょう。
導入後は、削減できた時間やミスの減少などを定量的に測定し、改善を繰り返しながら適用範囲を広げていきます。また、現場の担当者から継続的にフィードバックを得ることで、より実効性の高い運用につなげることができます。
自動化は日々の単純作業を削減するだけでなく、業務の正確性向上や担当者の負担軽減といった効果も期待できます。ここでは、RPAツール「Coopel」を活用し、人事業務の効率化に成功している企業の事例をご紹介します。
【課題】
採用業務において、外部サービスから取得した応募者情報を社内SNSで各部門へ共有しているが、情報取得はサービス画面からのコピー&ペーストに依存している。候補者ごとに画面を開いて手作業で転記する必要があり、新卒・中途あわせて1日30〜50件、月間50時間もの単純作業が発生していた。
【成果】
Coopelを活用して一連の業務を自動化したことで、応募データを各部門へスムーズかつ正確に共有できるようになった。個人情報を扱うミスが許されない作業へのプレッシャーも軽減され、担当者の心理的・業務的な負担の解消につながっている。
【課題】
採用募集メディアの管理画面やWeb試験ツール、採用管理ツールなど、複数のシステム間で情報のやり取りが大量に発生していた。作業自体は単純であるものの、個人情報を扱うため高い正確性が求められ、手作業での対応に多くの時間がかかっていた。
【成果】
Coopelによる自動化を取り入れ、業務の高精度化と高速化が実現。対応スピードの向上は、選考プロセスにおける離脱率の低減にも寄与している。また、作業時間の短縮によって余裕が生まれ、候補者一人ひとりに対してより丁寧な対応が行えるようになった。
【課題】
毎月月初に前月分の勤怠申請・承認依頼を社員とその上長へ連絡する業務が発生。単調な作業だが、給与計算の都合上4営業日以内に完了させなければならず、複数回の催促が欠かせない状況にあった。加えて、未入力者を把握するためには勤怠システム上で一人ひとり確認する必要があり、担当者の業務負担と心理的プレッシャーが課題となっていた。
【成果】
一連の処理をCoopelで自動化したことで、月初の繁忙期における作業負担が大幅に軽減された。また、実際の画面操作を再現する形で直感的にフローを構築できるため、専任のエンジニアを必要とせずに運用できるようになった。
人事業務が非効率に陥るのは、紙ベースでのアナログな運用や人材・ノウハウ不足といった明確な原因があります。こうした課題に対する解決策として、RPAやSaaSなどのテクノロジーを活用した「自動化」は非常に有効な手段となります。
本記事で紹介した手順に沿って進めれば、無理なく着実に人事業務の効率化を実現することができます。まずは「業務の可視化」から始め、課題の特定と優先順位の整理に取り組みましょう。