コラム

2026年8月27日

属人化のリスクと解消法:情報共有の仕組みとAI活用で標準化

属人化とは、業務の手順やノウハウを特定の担当者だけが把握し、ほかの人には共有されていない状態のことです。定型的な業務やノンコア業務でこの状態が続くと、業務の停滞や内部不正といった重大な問題に発展する恐れがあります。
本記事では、属人化がもたらす5つの重大なリスクと、その根本原因、そして無理なく進められる脱却のステップを解説します。あわせて、ノウハウを仕組みとして残すための考え方も紹介していますので、属人化に課題を感じている方はぜひ参考にしてください。

【目次】

  1. 「属人的」とは?意味と「標準化」との違い
  2. 放置すると危険!属人化がもたらす5つの重大なリスク
  3. なぜ属人化するのか?「リソース不足」の抜け出せない罠
  4. 解決策①:失敗しない「脱・属人化」の3ステップ
  5. 解決策②:ノウハウを「仕組み」に変えるシステム設計とAI活用の視点
  6. まとめ:属人化のリスクを認識し、無理のない範囲から始める

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「属人的」とは?意味と「標準化」との違い

業務の属人化から脱却するには、まず「属人的」という言葉に対する理解が欠かせません。ここでは、属人化の正しい意味や標準化との違い、排除すべきか否かの判断基準など、基本的な知識から解説します。

属人化の正しい意味と発生しやすい業務

「属人的」とは、業務の進め方や状況について特定の担当者しか情報を把握しておらず、ブラックボックスに陥っている状態を指します。これでは、その担当者が休んだり離職したりした際に、ほかの従業員が代わりを務められず、業務が停滞するリスクが生じます。
特に次のような業務では、属人化が発生しやすいので注意が必要です。

共通点としては、業務遂行に複雑な手順を要する、あるいは専門的で高度な知識・技術が求められるケースで、属人化が起こりやすいといえます。また、少規模の組織やチームをはじめ、特定の人物に依存しやすい環境も同様です。

意図的な属人化(クリエイティブ等)と排除すべき属人化の違い

属人化が発生すると、さまざまなデメリットが生じるものの、そのすべてが悪いものというわけではありません。なかには、企画立案やクリエイティブ制作など、属人的な能力が価値を生む領域も存在します。革新的な取り組みや斬新なアイデアは、標準的なプロセスではなく、個々の独自の視点や発想から生まれやすいためです。
一方、定型的な入力作業や集計作業といったノンコア業務での属人化は、業務停滞や負荷の増加などデメリットの側面が強く、企業にとって避けるべき課題だといえます。

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放置すると危険!属人化がもたらす5つの重大なリスク

属人化を放置すると、次のようなリスクが生まれる可能性があります。それぞれどのような影響をもたらすか、具体的に解説します。

リスク1:担当者の退職・休職による「業務の完全停止」

属人化のリスクで最も注意すべきなのは、担当者の退職・休職に伴う業務停滞です。担当者が不在のなか、別の従業員が業務を代行しようにも、進め方がわからなければ業務の遂行は困難です。そのほか、問い合わせ内容を再び聴取するなど、情報共有不足によって取引先や顧客に迷惑をかけることもあります。このように、業務がストップすれば、売上の機会損失や顧客満足度の低下など重大な事態に発展する恐れもあるので、注意が必要です。

リスク2:業務品質のばらつきと属人的なミスの多発

属人的な組織では、業務品質が安定せず、ヒューマンエラーも発生しやすくなります。例えば、完璧な対応が可能なベテラン従業員に対し、新人の場合はミスが多発するようなケースです。このような状態では、ミスが発生しても原因究明が進みません。内製的な業務ならまだしも、顧客と直接やり取りするような場面では特に注意すべきでしょう。「担当者が変わったことで、明らかに対応品質やスピードが低下した」など、クレームの発生や満足度の低下にもつながりかねません。

リスク3:ブラックボックス化による不正の温床

社内の業務システムやクラウドサービスを利用する際も、属人化が起こりがちです。例えば、システム内のデータに対するアクセス権限が特定の従業員にしか付与されていなかったり、ログ監視のような仕組みが整っていなかったりするケースがあげられます。このような状態では、業務フローがブラックボックス化しやすなります。結果として、意図的なデータの改ざんや外部への流出、機密情報の窃取など、不正の温床にもなりかねません。

リスク4:新人教育の負担が特定の社員に偏る

マニュアルが整っていないと、新人への説明を毎回先輩や上司が口頭で行うことになり、指導する側の負担が増えます。指導者自身も日常業務で手一杯な場合、教育に十分な時間を割けず、新人の立ち上がりが遅れる一因になることがあります。もちろん、育成の質はマニュアルの有無だけで決まるわけではありませんが、繰り返し発生する説明の手間を減らせるという点で、マニュアル整備は指導者の負担軽減に直結します。

リスク5:組織拡大・事業スケールの深刻なボトルネック

属人化はほかにも、組織拡大におけるボトルネックを生み出す可能性があります。「この仕事はAさんがいなければ回らない」という状態は、すなわち事業成長のキャパシティがAさんの処理能力に依存していることを意味します。これでは機会損失が発生しやすく、さらにAさんの休職や退職で事業成長が鈍化する恐れもあります。優秀な人材は有限だからこそ、「その人がいなくても回る仕組み」の構築が不可欠です。

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なぜ属人化するのか?「リソース不足」の抜け出せない罠

では、そもそもなぜ属人化が発生するのでしょうか。具体的な解決策を練るためにも、属人化が起こる原因を徹底究明しましょう。

現場のリアル:「マニュアルを作る時間がないから属人化する」

経営陣が積極的に業務標準化を標榜・推進しようとも、現場担当者からすると、「そもそもマニュアルを作る時間的余裕がない」というのが本音です。現場は日々の業務を回すだけで精一杯であり、そのなかから時間を捻出することは容易ではありません。

「属人化するから常に忙しい」という負のループの構造

とはいえ、マニュアルがなければ、いつまで経っても属人化は解消されません。その結果、次のような「負のループ」に陥るリスクが生まれます。

「属人化するから常に忙しい」という負のループのイメージ図

このような状態になると、ベテラン従業員ばかりに仕事が集中し、さらに新人の戦力化にも遅れが生じます。結果、業務標準化を達成できないだけでなく、組織全体の生産性向上やパフォーマンスの底上げにもつながらず、企業競争力が低下する可能性も考えられます。

ツール導入だけでは失敗する?脱・属人化のアンチパターン

属人化の解消を目的に、会計ソフトやプロジェクト管理システム、グループウェアなどに目を向けることも多いでしょう。しかし、便利なITツールを導入すれば問題が解消するかといえば、そう単純な話ではありません。むしろ、属人的な業務フローや体制のまま導入を進めると、「設定が複雑化して変更方法がわからない」「特定の従業員しかデータにアクセスできない」など、新たな属人化が発生する恐れがあります。そのため、まずは業務の棚卸しが必須です。

解決策①:失敗しない「脱・属人化」の3ステップ

属人化からの解消を図るには、以下のように適切な手順に則って手続きを進めることが大切です。手順ごとの進め方やポイントについて解説します。

ステップ1:業務の可視化と棚卸し(誰が・何を・どれだけやっているか)

前述の通り、属人的な業務フローや体制を残したまま脱・属人化を図ろうとしても、新たな属人化の発生というアンチパターンに陥りがちです。そのため、「誰が・どのような業務を・どれくらいの頻度や時間で行っているか」といった情報を洗い出しましょう。情報を可視化して、チーム・部署内で共有することが、属人化を解消するための第一歩です。業務を棚卸しする際に重要なのは、最初から完璧を目指しすぎないことです。特に従業員数が多い場合は膨大な業務を見直す必要がありますし、一人ひとり業務の進め方も異なるため、小さなタスクから徐々に範囲を広げていくと良いでしょう。

ステップ2:業務の断捨離(やめる・減らす・変える)

業務の可視化と棚卸しは、日常業務の無駄を見直す貴重な機会となります。そのため、この機に業務の断捨離を行うのがおすすめです。例えば、慣習として実施しているだけで、特に成果を生み出していないような作業は、思い切って廃止するのも一案です。そのほか、業務システムやクラウドサービスにも目を向け、不要な機能を整理してみるのも良いでしょう。徹底して無駄をそぎ落とすことで、業務効率化やコストカットなど、思わぬ効果が生まれることもあります。

ステップ3:業務フローの標準化とマニュアル作成

最終的に残った業務に関しては、マニュアルとしてノウハウや情報を整理しましょう。その際、誰が進めても同じ結果が出るように、業務フローを整理することが大切です。とはいえ、難しく考える必要はなく、最初のうちは簡単なチェックリストを作成するだけでも構いません。そして、実際にそのマニュアルを現場担当者に使ってもらい、フィードバックを受けながら徐々に最適なマニュアルへと改善を図りましょう。

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解決策②:ノウハウを「仕組み」に変えるシステム設計とAI活用の視点

マニュアルを作っても、更新されないまま形骸化してしまうケースは少なくありません。その背景には、情報が個人のPCやメール、あるいは担当者の記憶の中に閉じてしまっているという構造的な問題があります。

情報を「一箇所に集約する」設計にする

業務のフォーマットや保存場所がバラバラだと、いくら手順を文書化しても、結局は「あの人に聞かないと分からない」状態に戻ってしまいます。何年も前の情報を担当者の記憶頼みで探すのではなく検索で引き出せるようにしたり、特定の部署に個別で問い合わせていた情報を全社横断で調べられるようにしたりと、「聞かないと分からない」状態を検索できる状態に置き換える動きは、業種を問わず広がっています。

生成AIで「書く負担」「答える負担」を減らす

マニュアル作成が続かない理由の一つに、文書化そのものの手間があります。近年は、社内に残っているデータやログをもとに、生成AIに設計書や解説書のたたき台を作らせたり、特定の担当窓口に集中しがちな定型的な問い合わせにAIを一次対応させたりする使い方も広がっています。ゼロから文章を書く負担や、同じ質問に何度も答える負担が減ることで、現場が「時間がないから後回しにする」という悪循環から抜け出しやすくなります。


こうした仕組みづくりは、ツールを導入して終わりではなく、自社の業務やデータの状態に合わせた設計が欠かせません。まずは、日常的によく参照する資料や情報を一つ選び、それが「担当者に聞かなくても、検索すればたどり着ける状態」になっているかを確認してみることから始めてみてください。何から手をつければよいか分からない場合は、外部に相談しながら進めるのも一つの方法です。

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まとめ:属人化のリスクを認識し、無理のない範囲から始める

すべての属人化が悪いわけではありませんが、定型的な業務やノンコア業務での属人化が進むと、業務の停止や不正といった見過ごせないリスクにつながる可能性があります。まずは、日々の業務の中から一つだけ「もしこの人がいなくなったら困る」と思う業務を選び、その手順を書き出してみることから始めてみましょう。完璧なマニュアルでなくても構いません。小さな一歩が、属人化から抜け出す最初の足がかりになります。

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