RPAって何?
2025年7月23日
ここでは、上手な使い方の基本として、実際のRPAプロジェクトの経験を基にしたプロジェクトの進め方を伝授します。
RPA(Robotic Process Automation:ロボティック・プロセス・オートメーション)とは、定型的なデスクワーク業務を自動化するための技術です。人間が行っているパソコン操作を記録し、同じ手順で自動実行するソフトウェアロボットのことを指します。
RPAの基本的な仕組み
RPAは、ブラウザ操作、データ入力、ファイル操作、メール送信など、普段行っているパソコン作業を記録し、その手順を正確に再現します。プログラミング知識がなくても、直感的な操作でロボットを作成できるため、現場の担当者自身が業務改善を推進できます。
RPAの主な機能
作業手順の記録・作成機能では、実際の画面操作を記録してシナリオを作成し、マウスクリック、キーボード入力を自動化できます。条件分岐や繰り返し処理にも対応しており、複雑な業務フローも自動化可能です。システム間のデータ連携では、複数のシステムから情報を収集・統合し、Excel、CSV、Webサイト間でのデータ転送や異なるフォーマット間での自動変換を行います。スケジュール実行機能により、決まった時間での自動実行や夜間・休日の無人運転も実現できます。
RPAでは、様々な業務が対象になってきますが、いずれの業務でも手作業の効率化や作業ミスによるリスクの低減を目的にすることが多くなります。
手作業の効率化
作業ミスによるリスクの低減
RPA導入のメリット
RPAを導入する最大のメリットは、手作業の効率化です。手作業で数時間かかっていた作業が数分で完了するようになり、24時間365日の無人運転により繁忙期の労働時間削減に大きく貢献します。
作業ミスによるリスクの低減も重要な効果です。ロボットは定義された手順に従い正確に作業を行うため、人的ミスによるデータ入力エラーや転記ミスを防止できます。一度設定したロボットは同じ精度で作業を継続するため、品質の安定化と信頼性向上を実現します。
コスト削減効果も見逃せません。人件費の最適化や残業時間の大幅な短縮により、比較的短期間での投資回収が可能になります。従業員が単純作業から解放され、創造的な業務に集中できるようになることで、従業員満足度の向上も期待できます。
RPA導入のデメリット
一方で、RPAにはシステム変更への脆弱性というデメリットがあります。操作対象システムのUI変更により動作停止のリスクがあり、定期的なメンテナンスが必要になります。システム更新時には検証作業が発生するため、運用コストとして考慮しておく必要があります。
初期設定においても学習コストが発生します。シナリオ作成には業務フローの整理・標準化が前提となり、適用可能業務の見極めも重要になります。また、ロボットの監視・管理体制の構築、エラー発生時の対応手順の整備など、運用管理の体制整備も欠かせません。
近年、業務効率化の文脈で注目されているRPAと生成AIですが、それぞれ異なる特徴と役割を持っています。両者の違いを理解することで、より効果的な業務改善を実現できます。
RPAの特徴
RPAは定型的な作業手順を正確に再現することに特化した技術です。人間が行っているパソコン操作を記録し、同じ手順を繰り返し実行します。データ入力、ファイル操作、システム間のデータ転送など、決められたルールに従って作業を行うため、安定性と信頼性が高いのが特徴です。
生成AIの特徴
生成AIは大量のデータから学習し、新しいコンテンツを創造することに長けています。文章作成、画像生成、データ分析、質問応答など、創造性や判断が求められる業務で力を発揮します。人間のような思考プロセスを模倣し、状況に応じて柔軟な対応ができます。
適用業務の違い
RPAは「決まった手順で行う定型業務」の自動化に最適です。例えば、毎月の売上データをシステムから抽出してExcelに転記する作業や、定期的な報告書作成などが該当します。一方、生成AIは「創造性や判断が必要な業務」に適しており、マーケティング資料の作成、顧客対応の提案、データ分析レポートの作成などで活用されます。
導入の容易さ
RPAは現場の担当者でも比較的容易に導入できます。プログラミング知識がなくても、直感的な操作でロボットを作成できるため、即座に効果を実感できます。生成AIは高度な技術知識が必要な場合が多く、適切なプロンプト設計やデータ準備が重要になります。
コストと運用
RPAは一度設定すれば継続的に稼働し、月額数千円から利用できるサービスも多く、導入コストを抑えることができます。生成AIはAPI利用料やサーバー費用が継続的に発生し、利用量に応じてコストが変動します。
| 項目 | RPA | 生成AI |
| 主な用途 | 定型業務の自動化 | コンテンツ創造・データ分析 |
| 適用業務 | データ入力、ファイル操作<br>システム間データ転送<br>定期レポート作成 | 文章作成、画像生成<br>顧客対応提案<br>データ分析レポート |
| 導入難易度 | 低(現場担当者でも可能) | 中〜高(技術知識が必要) |
| 初期コスト | 低(月額数千円〜) | 中〜高(API料金・サーバー費用) |
| 運用コスト | 固定(月額料金) | 変動(利用量に応じて) |
| 精度・安定性 | 高(決められた手順を正確実行) | 中(学習データに依存) |
| 柔軟性 | 低(事前定義された手順のみ) | 高(状況に応じた対応可能) |
| 効果実感 | 即座(設定後すぐ) | 段階的(学習・調整が必要) |
RPAは様々な業務領域で活用されており、企業の生産性向上に大きく貢献しています。以下に代表的な活用事例をご紹介します。
営業・マーケティング部門での活用
広告効果レポート作成の自動化では、各広告プラットフォームからのデータ収集から分析レポートの作成まで、月間50時間を超える作業時間を削減した事例があります。従来は各顧客が利用する広告管理サイトに個別にログインし、データをダウンロードする必要がありましたが、RPAを経験したことがない担当者でも自動化を実現し、シナリオ作成にかかった時間を1ヶ月で十分に回収することができました。
営業リスト作成業務では、名刺管理システムからの営業リスト作成を自動化し、見込み客情報の収集、整理、フォーマット統一などの作業効率を大幅に向上させています。競合分析では、競合他社のWebサイトから価格情報や製品情報を定期収集し、自動でレポート化することで、日々の情報収集をロボットに任せることができます。
人事部門での活用
採用情報通知の自動化では、求人サイトから応募者情報を自動収集し、関係者への通知メール送信まで自動化することで、月間20時間の作業負担軽減を実現した企業があります。採用業務の量的・質的改善を両立し、垂直立ち上げを可能にした成功事例として注目されています。
勤怠管理業務では、社員の勤怠申請が所定日を過ぎても完了していない場合の催促メール送信や、月次の勤怠集計作業、有給管理などを自動化できます。入社手続き業務においても、新入社員の各種システムアカウント作成、社内システムへの登録作業、必要書類の準備などを自動化し、入社受入業務の効率化を図ることができます。
総務・経理部門での活用
経費精算処理の自動化では、経費申請データの転記、承認フロー管理、会計システムへの仕訳入力を自動化することで、月末の繁忙期における作業負荷を大幅に軽減できます。30時間分の作業をロボットに任せ、繁忙期のピーク労務時間を抑えることに成功した企業もあります。
請求書処理業務では、取引先からの請求書データ入力、支払承認フロー、銀行振込データ作成までの一連の業務を自動化し、処理スピードと精度の両方を向上させています。各種データ集計や報告書作成では、複数システムからのデータ収集、Excel集計、定型レポート作成を自動化し、毎月の定例業務を大幅に効率化しています。
コーポレート部門での活用
契約管理業務では、契約更新時期の通知、契約書データの整理・分類、契約管理システムへの登録作業を自動化することで、重要な契約の見落としを防ぎ、管理精度を向上させています。
コンプライアンス関連業務では、法的要件に基づく定期報告書の作成、各種届出業務の自動化により、コンプライアンス対応の効率化を実現できます。テンプレートを使ったロボット開発により、あっという間に自動化を実現し、従来の手作業から完全に解放された事例も数多く報告されています。
RPAを成功させるポイント
効果と難易度を評価した上で、効果が高く、難易度の低い領域から着手することで、RPAプロジェクトの成果を早くあげることができます。いきなり難易度の高い領域に着手すると、なかなか成果を出せず、プロジェクトメンバーの士気の低下や社内におけるRPAプロジェクトのプレゼンス低下などの恐れがあるのでお勧めしません。
現場主導の推進も重要です。実際に業務を行っている担当者自身がロボット作成に関わることで、より実用的で効果的な自動化を実現できます。導入後も定期的な見直しとシナリオの最適化を行い、変化する業務要件に対応していくことが重要です。
一方、業務量や業務のタイプに応じて、目的を達成するアプローチは様々で、対象業務によって推進方法を変えたり、2つの異なるアプローチを組み合わせて行うこともあります。実際にDeNAにおけるRPA活用は「PJ主導型」と「EUC型」の二刀流で進めています。二刀流にすることであらゆる定型的な業務の自動化を推進し、従業員が思考や判断などが必要とされるクリエイティブな非提携業務に専念できる環境構築を目指しています。

PJ主導型のアプローチでは、BPRに長けたメンバーが中心となって推進することが多いです。現状の業務を把握した上で投資対効果を判断し、ロボ化に着手することになります。PJ主導型で採用されるRPAの多くは、多機能で開発難易度の高い製品が多く、開発者にITリテラシーが必要なため、工数削減効果の低い業務は対象外になります。
一つひとつ業務量はそれほど多くないが、様々な種類の業務があるケースがあります。こういった多品種少量の業務自動化まで業務の自動化範囲を拡大しようとすると、事業部のユーザ自身がロボ化できるEUC型RPAの併用が有効になります。

PJ主導型RPAでは、ロボ化する対象のユーザ部門毎(例:経理や人事など)にロボ化の候補業務を調査表に記入してもらい、ロボ化する際の効果や難易度をPJ側で見積もります。事前に、ユーザ部門の方にロボが動作する様子の動画を見せるなどして、RPAができることのイメージを相手に持ってもらうと、調査がスムーズになります。
効果は、ロボ化によりどのくらいの工数が削減されるのか、どのくらい長く利用できるかによって評価します。頻繁に業務プロセスが変更になったり、利用するシステムに変更がある場合は、稼働した後のロボの改修コストが多くかかるため、注意する必要があります。例えば、1年以内に変更がある場合は、変更後に開発着手するなど方針を決めておくと良いでしょう。
難易度は、すでに開発実績のあるシステムを参照(IN)したり入力(OUT)する場合、そのシステムでRPAが動作するかの検証が不要であったり、既存ロボの部品を流用できる可能性があるため、難易度を低く評価します。逆に初めてRPAで操作するシステムは、動作するかどうかの検証や専用のRPAアカウントをそのシステムに用意するなどの調整が必要になるため、難易度は高くなります。また、ロボ化する業務シナリオの長さによっても、作成工数が変わっていきます。これらの観点を総合的に勘案して、難易度を評価します。

効果と難易度を評価した上で、効果が高く、難易度の低い領域から着手することで、RPAプロジェクトの成果を早くあげることができます。いきなり難易度の高い領域に着手すると、なかなか成果を出せず、プロジェクトメンバーの士気の低下や社内におけるRPAプロジェクトのプレゼンス低下などの恐れがあるのでお勧めしません。
この進め方をしていくと、効果が低い領域の業務(=業務量の少ない業務)の手作業が改善されず残ります。そこで「EUC型」を併用して、ユーザ自身で自動化できる手段を提供するのです。