コラム
2026年6月29日
「LangChainという名前は聞いたことがあるけれど、結局何者なのか?」ChatGPT APIを触ったことがある方ほど、この疑問を持ちやすいかもしれません。単純な問い合わせ応答はAPIで実装できても、社内文書を参照させたい、複数のツールを組み合わせて自動化したい、となった瞬間に壁にぶつかります。その壁を乗り越えるための手段のひとつがLangChainです。
この記事では、LangChainの定義から主要コンポーネントの役割や「MCPが出てきた今もLangChainは必要なのか」という疑問まで、1記事でまとめて解説します。なお、コードや専門的な操作の説明は省き、LangChainの仕組みと役割を、イメージで理解できることを目指しています。
【目次】
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LangChainとは、LLM(大規模言語モデル)を使ったアプリケーション開発を効率化するオープンソースフレームワークです。LLM単体には、いくつかの構造的な限界があります。
LangChainはこれらの限界を補い、複雑なAIアプリを効率よく組み立てられるようにするために2022年に登場しました。現在はPythonを中心に、JavaScript、TypeScriptなどのプログラミング言語で利用できます。LangChainを使うとできることは主に次の4つです。
エンジニアだけでなく、DX推進や業務改善を担当するメンバーにとっても「LLMで何ができるか」を判断するうえで知っておく価値があります。
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LangChainは複数のコンポーネント(部品)を組み合わせて使う設計になっています。それぞれの役割を理解すると、何ができて何ができないかが見えやすくなります。
モデルへの入力を整えて、呼び出して、出力を受け取るまでの一連の流れをまとめたモジュールです。内部は次の3つで構成されています。
Prompts:変数を埋め込んだプロンプトを再利用可能な形式で管理します。たとえば `”あなたは{role}です。{question}に答えてください”` のように定義しておけば、呼び出し時に値を差し替えるだけで異なる場面に対応できます。Promptsはさらに「Prompt templates」と「Example selectors」に分かれます。
Language Models:OpenAI・Anthropic・Googleなど複数のサービスのモデルを利用する機能です。モデルを切り替えてもコードの大部分を変えずに済みます。LLMs・Chat Modelsという2種類があり、LLMsは単発プロンプトで利用、Chat Modelsはチャット形式で利用するものです。
Output Parsers:モデルが返したテキストをJSON・リスト・独自クラスなどの構造化データに変換します。後続の処理でモデルの出力をそのまま使いやすい形に整える役割を担います。
複数の処理ステップを連鎖させる仕組みがChainです。あるプロンプトの結果を次のプロンプトに渡すという一連の流れを1つの単位として定義できます。現在はLCEL(LangChain Expression Language)という記法が推奨されています。
会話履歴をLLMに渡し続けることで「文脈を保持した対話」を実現するコンポーネントです。ConversationBufferMemory(会話履歴をそのまま保持)やConversationSummaryMemory(長くなった履歴を要約してトークンを節約)など、用途に応じた複数の実装があります。
外部のドキュメントやデータベースを検索して、LLMへの入力に文脈として渡す仕組みです。Chroma・FAISS・Pineconeなどのベクトルデータベースと連携して使うのが一般的で、RAGシステムの核となるコンポーネントでもあります。
LLMが「どのツールをどの順番で使うか」を自律的に判断して実行、監視する機能です。ReAct(Reasoning=推論 + Acting=行動)というフレームワークを採用しており、LLMが「まず情報を調べる → 計算する → 結果を整形して返す」といった複数ステップを自分で組み立てて実行します。
エージェントが呼び出せる機能の定義です。関数・API・検索エンジン・データベースなどをToolとして定義すると、エージェントが必要に応じて自律的に呼び出せるようになります。自作のToolも定義できるため、既存の社内システムやAPIとの連携に活用しやすいのが特徴です。

RAGとは「Retrieval-Augmented Generation」の略で、外部データを検索してその内容をLLMに渡すことで回答精度を高める手法です。基本的な流れは次のとおりです。
1.社内文書・FAQなどをテキストに変換してベクトルDBに保存する
2.ユーザーから質問が来たら、ベクトルDBで関連箇所を検索する
3.検索結果をLLMへの入力に付加して回答を生成する
LangChainにはRAG構築のための専用チェーン(RetrievalQA等)が用意されており、少ないコードで実装できます。活用例としては、社内問い合わせ対応Bot・製品マニュアル検索・法務文書のQ&Aなどが挙げられます。
AIエージェントとは、ユーザーの依頼を受けてLLMが複数のツールを組み合わせ、自律的にタスクを実行する仕組みです。たとえば「先週のWebアクセスデータをBigQueryから取得して、前週比をまとめてSlackに投稿して」という指示を与えると、エージェントは自分でBigQueryツールを呼び出し、計算を行い、Slackツールで投稿するという流れを判断して実行します。このような複数ステップにわたる自動化がLangChainのAgentで実現できます。
複数のエージェントを協調させたい場合はLangGraph(後述)と組み合わせることで、より複雑なマルチエージェント構成にも対応できます。
Memoryコンポーネントを組み込むことで、前の会話を踏まえた自然な対話が可能なチャットボットを構築できます。単純なQ&AではなくFAQの文脈を引き継ぎながら回答するBot、カスタマーサポートの一次対応Botなどに活用されています。
文書要約では、長いPDFや議事録をChunkに分割してLLMに順次渡し、最後に統合要約するパイプラインをLangChainで組むことができます。会議の議事録や月次レポートの自動要約など、繰り返し発生する作業の効率化に向いています。
LangChainとMCPは、そもそも担っている役割が異なります。ひとことで言えば、MCPは「AIと外部ツールをつなぐための共通規格」、LangChainは「つないだ部品を使ってAIアプリを組み立てるための道具箱」です。
MCPはLLMがデータソースやツールに接続するための統一プロトコル(規格)です。「USBがさまざまなデバイスを同じ規格で繋ぐように、AIとツールを標準的な方法で繋ぐ」というイメージが近いです。MCPでツールを定義すると、Claude・GPT・Geminiなど異なるモデルでそのツールを再利用できます。モデルや言語に依存しない接続標準という点が特徴です。
両者の違いを整理すると、次のようになります。
| MCP | LangChain | |
|---|---|---|
| 主な役割 | AIと外部ツールをつなぐ | つないだ部品でアプリを組み立てる |
| 解決すること | 接続方法の標準化 | 処理の流れ・記憶・判断の設計 |
| たとえると | USBなどの接続規格 | 作業の段取り・設計図 |
つまり、MCPで用意したツールを、LangChainが呼び出して組み合わせる、という協力関係が成り立ちます。「MCPがあればLangChainは不要」ではなく、MCPでつないだツールをLangChainで活かすという使い方が広がっています。シンプルなツール接続だけが目的ならMCP単体で十分なこともありますが、複数ステップの処理や記憶の管理、複雑な判断が必要になる場面ではLangChainが活躍します。
LangGraphはLangChainのエコシステムの一部として開発された、マルチエージェントフローを管理するライブラリです。エージェントの状態をグラフ構造で表現し、条件分岐・並列処理・ループ制御を組み込めます。使い分けの目安は次のとおりです。
LangGraphはLangChainの上位互換ではなく「複雑なエージェントグラフを組むための拡張」として位置づけるのが適切です。
LangChainは、LLM単体では補えない「記憶を持たない」「外部データを参照できない」「複数の処理を自律的に組み合わせられない」という弱点を補い、複雑なAIアプリケーションを効率的に構築できるフレームワークです。様々なモジュールを組み合わせることで、RAGによる社内文書の検索応答や、ツールを自律的に使いこなすAIエージェントまで、幅広い用途を実現できます。MCPの登場によって「LangChainはもう古いのでは」と感じた方もいるかもしれませんが、両者は競合ではなく補完し合う関係にあり、2026年現在もLangChainは実用的な選択肢であり続けています。さらに複雑なマルチエージェント構成が必要になれば、LangGraphへ発展させる道も開かれています。
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