「介護記録に毎日1〜2時間かかっている」「人手が足りないのに事務作業で時間が取られて、ケアに集中できない」という悩みを抱えている介護現場の担当者は少なくありません。「自動化」「効率化」に関心は持ちつつも「うち事業所は何から始めたらいいのか」「自動化ツールとAIって何が違うの?」「費用はどれくらいかかる?」という疑問で一歩が踏み出せないケースも多くあります。
本記事では、介護業界で効率化できる業務やその方法、実際に定型作業にかかる時間を削減した事例、自施設に合った導入の始め方などをまとめました。

【目次】

  1. ケアと並行して、毎日発生している手作業
  2. 介護業務を効率化する3つのアプローチ 
  3. 【月間60時間削減】RPAとAIを組み合わせた業務改善事例
  4. 自分の施設に合った方法の選び方
  5. 介護業務自動化の導入ステップ
  6. まとめ



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ケアと並行して、毎日発生している手作業

介護現場では、ケアと並行して記録・報告、事務作業、夜間巡回など、さまざまな手作業が毎日積み重なっています。

ケア後に行う記録・転記の作業 

体温測定・食事・入浴・排泄など、ケアのたびに記録が必要です。次の対応に追われるうちに内容が曖昧になりやすく、記録業務だけで1日30分〜1時間以上かかるケースも少なくありません。

事務・バックオフィス 

申請書対応、月末の介護報酬請求、スケジュール調整、職員教育など、ケア以外の事務作業も多岐にわたります。一つひとつは小さな作業でも、月単位で積み重なると数時間規模の負担になります。

夜間の見守り・巡回 

夜勤は少人数で複数の居室を担当し、定時巡回と記録を繰り返します。「異変を見落とさない」という緊張が続くため、身体・精神両面での負荷が大きい業務です。

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介護業務を効率化する3つのアプローチ 

介護業務の自動化・効率化には、大きく分けて3つのアプローチがあります。目的・予算・施設規模によって最適な手段は異なるため、難易度の低いものから順に整理します。 

【比較表】3つの方法を一目で整理

ステップ

方法

難易度

費用目安

主な用途

プログラミング経験

Step1

介護業務支援ソフト

月額数千円〜

介護記録・スケジュール管理・連絡の効率化

不要

Step2

業務自動化ツール・RPA

月額数万円~

発注などの事務処理・記録の転記や集約

ツールによる

Step3

AI・音声認識

月額数万円~

記録の文字起こし、表記統一

不要

STEP1:介護業務支援ソフト

ほのぼのNEXTワイズマンカイポケなど、介護記録・請求・職員のスケジュール管理をまとめて扱える介護ソフトを軸に、業務フローを整えていきます。記録・請求業務・情報共有を一つのソフトに集約することで、システム間の転記や確認の手間を減らせます。効率化の土台となる選択肢です。 

STEP2:業務自動化ツール

RPAやワークフロー作成ツールといった、パソコン画面上の操作を自動化するツールです。人が手で行っているクリック・入力・コピー&ペーストといった作業を、ソフトウェアが代わりに実行します。介護報酬を請求する手続きであるレセプト業務・職員の勤務実績の集計・備品の発注など、決まった手順で繰り返されるパソコン作業と相性が良く、ノーコードで設定できるクラウド型ツールも増えているため、ITに詳しくない担当者でも導入・運用できます。 

STEP3:AI・音声認識

音声認識は、タブレットやスマートフォンに向かって話すだけでテキストに変換する技術です。「食欲あり、ほぼ全量摂取。摂取ペースはゆっくりだが自力で完食 」と話せば、そのまま記録として残ります。
また、AIを活用することで、専門用語や略語の言い換え、表記の統一ルールをあらかじめ設定しておくことができます。入力のたびに表現がばらつくことなく、一定の書式で記録が蓄積されていくため、後から記録を確認・共有する際にも読みやすくなります。   

【月間60時間削減】RPAとAIを組み合わせた業務改善事例

ここからは月間60時間超の事務作業削減を実現した介護事業所の事例をご紹介します。RPAと生成AIを組み合わせた自動化フローがどのように機能しているか、具体的に見ていきます。

課題

訪問介護事業所として特定事業所加算を取得するにあたり、サービス責任者とヘルパー間の連絡記録を実際に使用していた連絡ツールとは別に介護管理システム「カイポケ」上に残す必要があり、毎日大量の事務作業が想定されました。本来の介護サービスに集中するためにも、最初から効率化ありきで取り組む必要がありました。

自動化の内容

RPAツール「Coopel」と生成AI「Google Gemini」を組み合わせて、2つの業務を自動化しました。1つ目は「ヘルパーへの指示だし」で、カイポケから担当利用者と訪問時間の情報をRPAで収集・転記し、過去の介護記録をもとにAIが個別指示文を生成してカイポケに記載します。2つ目は「ヘルパーからの報告集約」で、支援後にヘルパーがカイポケへ入力した特記事項をRPAが収集し、AIが要約・整理します。いずれもサービス責任者やヘルパーが最終確認・修正する運用としています。

成果

最大で1日3時間分の業務を削減し、月間60時間超の事務作業削減を実現しました。特定事業所加算の取得により月間18万円の収益増を達成しつつ、職員の残業ゼロも維持しています。

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自分の施設に合った方法の選び方

ツール選びのポイントと導入時の考え方 

自施設に合った方法を選ぶ際のポイントを整理します。介護業務支援ソフトは、記録のデジタル化と情報共有の基盤を作る役割を持ちます。業務自動化ツールやAI音声認識はその基盤の上で機能するため、導入の順序として最初に検討したい選択肢です。
請求・発注の事務作業を減らしたい場合は、月末の請求作業や定期発注業務から業務自動化ツールに着手すると効果が出やすいです。記録業務の負担が大きい場合は、AI音声認識の導入を検討するのがおすすめです。予算や人手が限られている場合は、無料体験やトライアルを活用してスタッフの反応を見ながら検討するのが現実的です。

補助金・補助制度の活用

ツール導入にあたって費用が気になる場合は、補助金・支援制度の活用を検討する方法があります。以下に代表的な制度を挙げますが、内容や申請条件は制度ごと・地域ごとに異なるため、各制度の公式窓口までお問い合わせください。 

  • デジタル化・IT導入補助金(経済産業省):介護ソフト・業務自動化ツールの導入時に補助金の交付対象になる場合があります。
  • 介護テクノロジー導入支援事業(厚生労働省):介護ロボットやセンサー機器の導入、介護ソフトやそれを利用するタブレットやスマートフォンの導入が支援対象となる場合があります。
  • 生産性向上推進体制加算 (厚生労働省):見守り機器や介護ソフト等を導入して生産性向上の取組を行った事業所が介護報酬として加算を受け取れる仕組みです。

介護業務自動化の導入ステップ

「どの方法を選ぶか」が決まったら、どう進めるかです。段階的なアプローチが成功のカギです。

①自動化したい業務を洗い出す

1日、1週間、1か月のうちにどんな定型作業が発生しているかをリストアップします。工数が大きく、繰り返し発生する業務が自動化の優先候補です。スタッフへのヒアリングで「何が一番大変か」を可視化するのも有効です。

②方法・ツールを選定する

上記の判断フローを参考に最適な方法を決めます。無料体験・トライアルを活用してリスクを最小化しましょう。補助金申請を行いたい場合は条件も確認しておきます。

③小規模でテスト導入する

最初から大規模な自動化を目指さず、まず1業務に絞って安定稼働を確認します。現場スタッフへの操作研修と「なぜ自動化するのか」の共有も重要です。うまくいったら他の業務に展開します。

④効果測定・全体展開する

削減できた時間・エラー数・スタッフの満足度を記録して効果を可視化します。数値が出れば法人内や他施設への横展開がしやすくなります。年に1回程度、自動化の見直しと次のターゲット業務の選定を行いましょう。

まとめ

介護業務の効率化は、一度に大きく変えようとする必要はありません。まず記録のデジタル化という土台を作り、業務自動化ツールやAI音声認識へと段階的に広げていくアプローチが、現場への負担が少なく、定着しやすい進め方です。
どこから始めるかに迷ったときは、「今、現場で一番時間を取られている作業はどこか」を起点に考えてみてください。介護の現場で本来集中すべきはケアです。効率化はその時間を守るための手段です。まず1つの業務から効率化や自動化ができないか試してみることが、現場を変える第一歩になります。 

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